BEAUTY / Expert

バレリーナ飯島望未のビューティートーク。

アメリカ、ヒューストン・バレエ団でファーストソリストとして活躍する日本人バレエダンサー、飯島望未さん。日本人らしい繊細な表現と、ダイナミックな跳躍で魅了し続ける彼女は、ダンサーとしてだけではなく、ファッショニスタとしても注目を浴びている。私服スナップを載せたインスタグラムのフォロワーは増加中、さらにはファッションブランドのアンバサダーを務めるなど、高い発信力をもったバレリーナ。今回、『VOGUE JAPAN』6月号のビューティーストーリーでモデルとして登場した彼女に、そのビューティーの秘密を教えてもらった。

表現を磨くという意味でも、アートやファッションを楽しみたい。

——ダンサーとしてはもちろん、最近はインフルエンサーとしてもとても注目を浴びていますが、もともとインスタグラムを始めるにあたって、何かビジョンがあったのですか?

もともと私服ばかりをのせたインスタグラムの裏アカウントがあったのですが、そこではかなり自由な感じでプライベート写真などを公開していました。ときどきバレエの写真もアップしていたことから、『この人、バレエの人なんだ』と初めてバレエに興味を持ったなんていう人が出てきてくれて……。バレエの世界を少しでも知ってもらえるのであれば、そのきっかけが何であれ嬉しいなと思って、今に至っていますね。

——バレリーナであり、ファッショニスタというのが、確かに今まであまりないように思います。

バレエダンサーってあまりおしゃれなイメージがないかもしれませんが、そういうところも変えられたらと思っています。今私が所属しているヒューストンのカンパニーは毎日おしゃれをしてスタジオにくる子が多くて、やっぱり見ていて楽しいですよね。もともと母親が服好きだったので、自然な流れで私もファッションに興味を持ちましたが、バレリーナである前にひとりの女性として自分の生活を豊かにしたいといつも思っています。友人にはダンサーでありながらDJをやっていたり、楽器を演奏したり、という多趣味な人たちも。表現を磨くという意味でも、バレエだけではなく、アートやファッションなど、インスピレーションを与えてくれるものとの出会いは、大切にしていたい。年に2回のコレクションシーズンは特に楽しみにしています。

自分には似合わないと壁を作らず、自由な気持ちで新しいメイクにも挑戦したい。

——今回はビューティーストーリーの撮影でしたが、普段からメイクにもこだわりがありますか。

プライベートでは色々なメイクをします。50年代、60年代の頃のメイクが好きで、それを研究して真似していたこともありました。レッスン中はとにかく汗がすごいので、メイクはしていないのですが、舞台のメイクは自己流です。パワフルな女性、繊細な女性など、演じる女性像に合わせて微妙なチェンジを加えていきます。舞台上ではライトが強いので、顔の輪郭と表情がでるように眉はしっかりと描くのが基本のマイルール。ハイライトも多めに入れて立体感を意識しています。今回はVOGUEの撮影のために眉を脱色しましたが、個人的にはエッジが効いていて、とても気に入っています。髪色も役の制約がないときは、シルバーにしたり、金髪にしたり、気分でいろいろトライしますが、メイクも同じ。あまりひとつのスタイルに固執したり、自分には似合わないと壁を作らず、自由な気持ちで楽しんでいたいですね。

——スキンケアやボディケアについてはどうですか。

スキンケアは日々のレッスンで汗をかくのでシンプルですが、ボディケアは入念にします。バレリーナである以上、体が資本なので、オイルを使い足裏から太ももまで、マッサージは毎日欠かせません。ボディラインに関してはコンプレックスもありますが、レッスンでの消費カロリーがすごいので、スリムになりたいみたいな願望はないですね。

ダンサーとして、どこまで理想の自分に近づけるか、常に自分との戦い。

——海外のカンパニーで数少ないアジア人ということで、特に最初は葛藤があったのでしょうか。

そうですね。入団当初、スタイルについては、やはりコンプレックスに思っていました。けれども努力次第で脚の形を綺麗にみせることも可能なんだということに気がついてからは、なるべくポジティブに転換するようになりました。上半身を褒められることが多いのですが、西洋人よりも胴が長い分ラインが綺麗に見えたりするんです。背中ひとつで語ることができるように、見せ方の研究にはかなり時間を割いてきました。そういう方法しかないですからね。

——ヒューストン・バレエ団で踊ることの喜びとは?

ダンサーひとりひとりの個性が強いカンパニーです。毎月のように舞台があり、演目のバラエティも多いですね。リハーサルも含めると時には5つくらいの異なる作品の踊りを同時進行していることも。少し前にヒューストン・バレエ団を辞めて、スイスのチューリッヒ・バレエ団に入ったのですが、そこでは自分の踊りをディレクターから否定され、モヤモヤとした気持ちで過ごしていました。ヒューストンで踊っているときが一番自分らしくいられたなと思って、だめもとで監督と話してみたら、温かく迎えてくれました。前にヒューストンにいたときは環境を変えてみたいという思いが強かったのですが、今ここに戻ってきて、とてもフレッシュな気持ちで踊ることができています。どこまで自分の理想に近づくことができるか、常に自分との戦いです。そして、日本のバレエ界がより良くなることが、今私が考える最終目標。それに貢献できるのであれば、将来的には日本に戻るという選択肢もあるかもしれません。

撮影中の軽やかな舞いは、動画でチェック!

Photo: Jingna Zhang  Makeup: Yuka Washizu Hair: shuco Stylist: Aya Fukushima Editor: Yu Soga